Tamura ヒトハタ
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チャレンジングに切り開く二拠点居住

プログラマ―/移動式観光農園オーナー 谷口絵美(佐久市)

長野県の移住支援プログラム「おためしナガノ」を利用して、佐久市と東京の二拠点で暮らす谷口絵美さん。現在の暮らしや移住後に新しく取り組んでいる「移動する小さな観光農園」についてお話を伺いました。

山に囲まれた田舎暮らしで感じる幸福感

横浜に生まれ、東京で仕事をしていたこともあり、自分はずっと都会が好きなんだと思っていました。正直にいうと地方での田舎暮らしにはあまり興味がなくて。でも、今住んでいる佐久の祖母の家には、子供の頃から頻繁に訪れていて、夏には蓼科山や八ヶ岳で家族と登山をしていました。中高生の頃は登山から少し離れるのですが、大学生になって山岳部の友人とまた山に登るようになりました。登山の魅力を自分の中で再発見するうちに、あれ?私、都会が好きだと思っていたけどもしかしたら山も好きかも?と気が付いたことは移住の契機として大きかったですね。今はすっかり田舎が好き、佐久が好き。“自宅のドアから一歩外にでると山が見える”という最高の環境で暮らしています。

区の職員からプログラマーへ転身、フリーランスへ

もともとは都内で区の職員として働いていました。しかし学生時代からプログラミングに興味があったので働きながらスクールに通い、技術を身に着けました。転職後は会社員として経験を積み、2年前にフリーランスのプログラマーとして独立しました。場所にとらわれずにハタラクことのできるITの仕事を持っていたことは、二拠点居住をスムースに始めることができた要因の一つだったと思います。

Photo:石田 諒

「おためしナガノ」を利用して長野と東京で二拠点居住

おためしナガノ」という長野県が行っている、都内のIT関連事業者を誘致する公募に採択され、この制度を利用して佐久と東京の二拠点居住をスタートさせました。「おためしナガノ」では交通費の補助を受けることと、地域のコワーキングスペースを利用することができます。ここで、ワークテラス佐久を運営する江原さんや地域の方々とつながりを持てたことが、大きな収穫でした。県が行っている事業ということで地域の方にも比較的認知されており、「おためしナガノで来ています」とお話することで、受け入れていただきやすい環境がありました。二拠点居住のいいところは、いきなり完全に移住するわけでないので、新しい場所へ、最初は一週間ほど旅行に行く感覚で移動し、気軽に暮らし始めることができる点だと思います。でも、いまではすっかり佐久の暮らしが気に入ってしまい、年内には東京の拠点を引き払って佐久に完全移住する予定です。

日本のブルーベリー「アサマブドウ」の魅力を伝える事業

現在はプログラマーの仕事と「移動する小さな観光農園」の二つの仕事を持っています。プログラマーの仕事としては、東京で生まれた仕事を佐久内でもシェアしていきたいという目標があります。とくに佐久には女性でIT関連のお仕事をされている方々がまだ少ないので、コミュニティの中で仕事をシェアする機会や学ぶ機会を作っていけたらと思っています。
もうひとつの「移動する小さな観光農園」は、車にブルーベリーの鉢を乗せて移動し、イベントや道の駅などで収穫体験をしていただくものです。この農園では“日本のブルーベリー”と呼ばれている「アサマブドウ」を味わっていただくことができます。アサマブドウはツツジ科スノキ属の高山植物で、正式名称はクロマメノキといいます。叔母の話では、昔は小諸にある浅間山に夜明け前に行って、野生のアサマブドウをみんなで収穫していたそうです。残念ながら、今は国立公園になっているので収穫には行けませんが、佐久ならではの味わいや風土を移動農園で再現したいと思っています。

移住のハードルを下げる“切り込み隊長“として

移住や多拠点居住にハードルを感じる方もいらっしゃると思いますが、私が実践することで「こんなことやっても大丈夫なんだ!」と感じてもらえるといいなと思っています。佐久移住の切り込み隊長的な役割が担えたらうれしいですね。悩んでいたり、迷っている方には、「まずは地域でいろいろなことを少しずつやってみるのがおすすめですよ」とお伝えしたいです。私が佐久暮らしを楽しんでいることが、移住のロールモデルのひとつになるように、山を登る時と同じチャレンジングな気持ちで切り込んでいきたいと思っています。