Tamura ヒトハタ
Facebook Twitter

ヒトのために生きる移住、起業

合同会社TEAM3939 共同代表 加藤夕紀子(佐久市)

企業人からの移住、地域おこし協力隊として活躍後、地域で起業。長野県佐久市で、日本古来の植物であるマコモダケを活用した事業と道の駅の管理運営を行う加藤夕紀子さんにお話を伺いました。

「移住して、ヒトのために身体を使って生きよう」

3.11でお金があってもモノが買えないという経験をして、「お金は紙切れなんだ」ということに気が付きました。「なんで紙切れのために人生の選択をしていたんだろう」という疑問を抱くようになって。経済至上主義にクエスチョンが湧いたんですね。5年程モヤモヤを抱えていた期間にパートナーを亡くし、しばらく落ち込んでいました。でもある時に、「そうだ、仕事を辞めて移住しよう!自分の身体がまだ元気で動く内に、ヒトのためにこれまでの経験やキャリアを活かそう」と思い立ったんです。そう思ったら、心も元気になっていきました。移住を決心して、半年後には佐久市での暮らしをスタートさせました。

佐久市での仕事が決まったのは、移住決定後

東京で勤めていた会社は退職することにし、移住を決めた時点では次の仕事は未定でした。地域のハローワークにも行きましたが、私の希望であった社会貢献できる仕事には巡り合えませんでした。そんな中で参加した、佐久市の移住フェアの座談会に、市長の柳田清二さんが参加されていて、仕事のことを相談したところ、地域おこし協力隊が佐久市でも始まるので、応募してみてはどうかとアドバイスをくださいました。東京で移住の準備をしている間に、地域おこし協力隊としてハタラクことが決まり、担当地域で“食と健康”をテーマに仕事をすることになりました。正直にいうと収入面について不安はありましたが、いざ暮らし始めてみると、無理に節約するわけでもなく、普通に暮らす中で貯金もできました。都市部と地方ではお金のかかり方が違うんだなということを実感しましたね。

移住を決めたのは、土地が体に合う感覚があったから

出身は東京です。社会人になってからも東京で働いていました。もともとは、キャンプやアウトドアに全く興味がなくて(笑)。将来自分が地方で暮らすなんて全く想像していませんでした。でも、東京で働いているときに八ヶ岳に遊びに来たことがありました。仕事のストレスなどで心身ともにとても疲労していたのですが、八ヶ岳に滞在している間にみるみる疲れがとれ、どんどん元気になっていって。この経験があったので、移住先は八ヶ岳の傍がいいと思っていました。知人の紹介で佐久市を案内してもらい、土地にインスピレーションを感じたので、佐久市に移住することにしました。今は当初のインスピレーション通り、山々を眺めなら快適に暮らしています。

地域おこし協力隊終了後に仲間たちと起業

地域おこし協力隊の任期中に「マコモダケ(マコモタケ・真菰筍)」という植物に出会いました。マコモダケは9月~11月頃を旬として根元を食べることもできますし、葉は乾燥させてお茶として飲んだり、筵(むしろ)などの生活用品の素材にもなります。その歴史は古く、縄文時代には日本人の生活の中にあったようです。日本書紀や万葉集にも記載があり、現在でも出雲大社のしめ縄に用いられるなど、霊性の高い植物ともいわれています。もちろん、それまで農業の経験はありませんでしたが、素材の面白さにひかれ、今は三反の田んぼを借りてマコモダケを自分の手で育てています。また、地域おこし協力隊任期終了後は仲間達とともに会社を立ち上げ、その中でマコモダケの生産から加工、販売までを事業化しました。その他に、道の駅ほっとぱ~く浅科の運営管理も行っています。

Photo:山うえ雅子

組織に雇用される働き方からパラレルワークへ

起業も、移住当初は予定していませんでした。それまでは組織に雇用されているのが楽だし当たり前。雇用されていないと不安でした。でも移住して価値観がどんどん変わっていきましたね。暮らし方もシンプルになりましたし、ないものは創ればいいと思うようになりました。一つの会社から収入を得るよりも、パラレルワークとしていくつも仕事を持っている方が生き方として楽なのではないかなと。こうした働き方や暮らし方を知ったことで、ものすごく心に余裕が生まれたように思います。それまでは、狭い範囲でしか見ていなかった物事について、移住して仕事を変え、生活が変わったことによってものすごく視野が広がりましたね。

Photo:山うえ雅子

移住を検討している方は、まず飛び込んでみてほしい

佐久市には「何かやってみよう」と実践されている方が多い。チャンスがたくさんあります。受け身ではなくて攻めていきたい方にはうってつけの場所だと思いますね。移住を検討されている方には、考えすぎないで一度飛び込んでみることをお勧めします。失敗なんて、本当は人生にないと思っています。どんな経験もあとで生きてきます。ダメならまた戻ればいいし、でも案外どうにかなってしまうものですよ。